バーチャルウォーター(仮想水)とは?水問題についてわかりやすく解説
日本では蛇口をひねれば、当たり前のように水が出てきますが、世界に目を向けると、多くの国が深刻な水問題を抱えているのが現状です。私たちには関係ないと思われがちですが、食材の多くを輸入に頼っている日本も、水の問題に大きくかかわっています。
そもそも肉や野菜を育てるには大量の水が必要ですが、多くの食材を輸入に頼っている日本は、間接的に各国の水を利用しているのです。つまり、日本は輸入食料を通して間接的に見えない水を輸入していることになります。これが「バーチャルウォーター(仮想水)」という考え方です。
この記事では、バーチャルウォーターの概念や現状、計算方法等を解説します。
目次
バーチャルウォーター(仮想水)とは?
バーチャルウォーター(仮想水)とは、ある食材を生産するのに必要な水の量を指します。食材を輸入する国が、もし自国でその食材を生産することになったら、どの程度の水が必要になるのかを推定し、算出するというものです。
この概念を広めたのは、ロンドン大学東洋アフリカ学科名誉教授のアンソニー・アラン氏です。※1
例えば、トウモロコシ 1kg を育てるのに必要な水の量は約 1,800L です。牛肉 1kg を生産するには、実に約 20,000L もの水が使われます。
つまり、食料を輸入するということは、その食料を生産するときに使われた水も一緒に輸入しているということになります。私たち日本人は、食料の多くを海外から輸入することで、自国の水を消費せずに済んでいます。
日本のバーチャルウォーターの現状
日本の食料自給率はわずか 4 割程度で、6 割は海外からの輸入に頼っています。つまり日本人の食生活は、輸入した食材を作るのに使われた水「バーチャルウォーター」に支えられていると言っても過言ではありません。※1
私たちは知らず知らずのうちに、世界中の水を消費しています。そのため、海外の水問題に関して決して無関係な立場ではありません。※1
2005 年の統計によると、日本が海外から輸入したバーチャルウォーター量は約 800 億 ㎥ にも上ります。大半は食材によるもので、この量は、日本国内の年間水使用量とほぼ同じです。私たちの食卓に並ぶ料理の裏では、こんなにも多くの水が使われているのです。※1
身近な食べ物のバーチャルウォーター量
私たちがよく食べている食品には、どれほどのバーチャルウォーターが使われているのでしょうか。
- コーヒー(1杯)
バーチャルウォーター量:210L
500mLペットボトル換算すると約 420本分 - ハンバーガー(1個)
バーチャルウォーター量:999L
500mLペットボトル換算すると約 1,998本分 - カレーライス(1人前)
バーチャルウォーター量:1,095L
500mLペットボトル換算すると約 2,190本分 - 牛丼(1杯)
バーチャルウォーター量:1,889L
500mLペットボトル換算すると約 3,778本分
よく食べている食品のバーチャルウォーターを、例をあげて紹介しました。
どの食品をとっても、多くの「目に見えない水」を使っているのが分かります。
より詳しいバーチャルウォーター量を算出したい場合は環境省の公式 web サイト「virtual water_仮想水計算機」ページで計算できます。
バーチャルウォーターから見える水問題
前段でお伝えした通り、日本人の日々の食事には、見えない水が大量に使われています。
この現実を知ると、バーチャルウォーターが世界にどのような影響を及ぼしているのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
ここで、バーチャルウォーターとも関連する世界の水問題を紹介します。
水不足
世界で深刻度の高い水問題のひとつが水不足です。2018 年の推計によると、私たちが必要とする淡水資源は、2030 年までに 40%不足すると予測されています。世界人口が増え続けることで、水危機が現実味を帯びてきました。※3
2021 年に発表されたユニセフの調査によると、14 億人以上もの人々が、安定した水へのアクセスが得られない環境で暮らしています。実に、80 か国以上の子どもたちが、安全できれいな水が手に入りにくい状態に置かれているのです。
事実、世界の子どもの 5 人に 1 人が十分な水を得られていません。このような地域の割合がもっとも高いエリアは東部・南部アフリカです。次いで、西部・中部アフリカ、南アジア、中東と続きます。※4
水質汚染
世界では水質汚染も深刻です。安全ではない水を飲まざるを得ない人の数は、世界に 20 億人以上。不衛生な水が原因で、下痢症にかかって命を落とす子どもは、1 日 1,000 人近くに上ります。人口増加や気候変動によって水不足が深刻化するなか、ずさんな水の管理や水質汚染が、問題をさらに深刻化させているのです。
特に女性や女の子は、大きな影響を受けています。これは、水くみの仕事が主に女性や女の子の仕事とされている地域が多いためです。水の問題により、教育や就業の機会まで奪われているのです。※3
バーチャルウォーターの日本と世界の比較
バーチャルウォーターの輸入量が多いのはどの国でしょうか。実は、上位を占めているのは先進国です。ここで、日本と世界の比較を見てみましょう。
バーチャルウォーターの輸入が多い国
バーチャルウォーター輸入国の上位は下記の通りです。※5
- 1 位 アメリカ
- 2 位 日本
- 3 位 ドイツ
- 4 位 中国
- 5 位 イタリア
- 6 位 メキシコ
- 7 位 フランス
- 8 位 イギリス(UK)
- 9 位 オランダ
G7 の先進 7 か国のうち、実に 6 か国がランクインしており、バーチャルウォーターをたくさん輸入していることがわかります。日本やイギリスのように降水量の多い国でさえ、バーチャルウォーターを介して他国の水を大量に消費しているのです。
日本のために水が枯れている国がある?
日本人の食生活は、ここ数十年で大きく変わりました。お米の消費量は減る一方で、肉やバター、油を使った料理が増えています。いわゆる「食の欧米化」です。
お肉やバター等の油脂類を生産するには、たくさんの水が必要です。食生活の欧米化によって、バーチャルウォーターの量は増加しているのです。※6
一方で、日本に農作物を輸出する中国北部やアメリカ中西部では、農業用水として水資源のうち 6 割近くが使われており、水不足の危機にさらされているのが現状です。アメリカ、カリフォルニア州では、干ばつで農業用水が確保できず、農家の失業が相次ぎました。このように日本の食を支える国々で、水が枯れかけているのが実情なのです。※7
私たちにできること
グローバルな水問題の解決には、一人ひとりの行動が欠かせません。そこで私たちが今日から始められる取り組みを紹介します。
食生活・習慣の見直し
お肉中心の食生活は、野菜中心の食事に比べて、バーチャルウォーターの消費量が格段に多くなります。畜産物の生産過程では、穀物や野菜よりもはるかに多くの水が使われるためです。お肉類の摂取を控えめにするだけで、バーチャルウォーターを減らせます。※8地産地消
輸入食品を買うということは「その国の水を使って作った食べ物を輸入する」ということです。知らないうちに、生産国へ水不足のリスクを押し付けることに繋がっているのです。
そこで地元でとれた旬の食材を選ぶ「地産地消」を心がけると、他国の負担となっているバーチャルウォーターの削減に繋がります。※8
プレミアムウォーターも水問題に取り組んでいます
私たちプレミアムウォーターは、単に天然水をお届けするだけでなく、事業活動を通して世界の水問題へ積極的に取り組んでいます。力を入れている活動のひとつが「水資源の保全」です。
プレミアムウォーターは「地下水は限りある大切な資源である」と考えています。だからこそ、「水を創る」という考え方を大切にしており、森林を保護・育てることで地下水源を守っていく活動や、地下水の適正な利用に取り組んでいます。
また、次世代を担う子どもたちに、水の大切さを伝えていく活動も大切にしています。日本のおいしい天然水の魅力や、水資源を取り巻く現状について、子どもたちにわかりやすく伝える教育活動を続けています。
バーチャルウォーターを意識してできることからはじめましょう
日本でさえ、輸入食料を通じて世界中の水を消費しています。水不足や水質汚染等、世界の水問題は他人事ではありません。
食事の際に「この食品はどこでどう作られたのだろう」と意識するだけでも、バーチャルウォーターへの理解は深まります。
食生活の工夫や地産地消等も含め、今日からできることをひとつずつ実践してみましょう。
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参考文献
- ※1 virtual water(環境省)
- ※2 MOE カフェ バーチャルウォーター量(環境省)
- ※3 水の国際行動の 10 年 – 2018-2028 世界的な水危機を回避するために(国際連合広報センター)
- ※4 3月22日は世界水の日子ども5人に1人が必要な水を得られず 水の安全保障をすべての人に(ユニセフ)
- ※5 「隠れた水 世界水の日報告書 2019(Water Aid)
- ※6 日本の食料自給率(農林水産省)
- ※7 見えない“水” 輸入で成り立つ日本の食 ~世界の水危機と飢餓~(ハンガーフリーワールド)
- ※8 世界の水問題と私たちの生活 仮想水とWater Footprintの観点から(国際基督教大学)
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